トマトの病気で最も怖いのは、トマト青枯病です。これに感染するとしおれてバタッと倒れます。
土壌病原菌なので、土壌感染力が強く、広くあっという間にその畑のトマトは全滅します。これは細菌病で、ウドンコ病のように糸状菌病とは異なります。細菌は原核細胞で、細胞核を持たずに、遺伝子DNAは細胞中に散らばっています。より原始的な構造がゆえに増殖力は非常に大きいです。
植物の水を吸い上げる導管で増殖し、導管を詰まらせます。罹病した植物を切ると、白い粘性が若干ある液体が大量に出ます。この白い液体は、細胞外多糖類と呼ばれるもので、この菌は大量に吐き出します。なお、この多糖類は他の細胞でも作られ、人工的に作られたものは食品添加物になっています。
この細菌のすごいところは、純水に保存がきくというものです。多分栄養がない状態になると、仮死状態になるのでしょう。純水中から栄養培地に移したとたんに増殖を繰り返して、翌日には培地が白濁しています。この菌の最適温度は27℃と言われています。30℃以上になると、ヒートショックたんぱくを分泌して、自己を守ろうとします。どんな細胞でもヒートショックたんぱくは、その細胞の最適温度を超過した時に細胞内に分泌します。傷ついた細胞の修復など様々な作用があります。また、この菌は非病原株というものがあり、病原性を発揮しません。その理由として、原核細胞に散らばったDNAがプラスミドという環状DNAになった時に見られます。私は、この配列は太古の昔、ウィルスだったのではないかと思います。昔、ウィルスが細菌に侵入して、メインのDNA(ゲノムDNAといいます)に取り込まれ、一配列になったのが、上述のヒートショックなどで飛び出し、再びプラスミドとしてウィルス状になったのでは、と考えています。
難しいですが、遺伝子工学はおもしろいですよ。