ここで、話を変えて、植物の病気について書きましょう。元々私は植物病原菌の遺伝子工学が専門です。
植物は、病原菌の侵入があると、大きく2つの戦略をとります。一つは、病原菌を封じ込めるやり方です。侵入した箇所の細胞を自死させ、意図的に死んだ細胞に閉じ込めます。実はミカンなどの黒い斑点はこの名残です。ですから私はミカンを買う時に黒斑点がぶつぶつしているのは、無農薬あるいは減農薬栽培ということで、意図的に買ってます。
専門用語で、ハイパーセンシティブリスポンス(過敏感反応)といいます。略してHRSですね。
もう一つは、病原菌の細胞膜が出すエリシターに反応して、情報伝達系を活性化して、抗菌物質を出して、病原菌を殺すというものです。エリシターとそれを抑制するサプレッサーの研究というのが研究室のメインテーマでした。尤も私は傍系でしたが。このように植物の病気やそれに対する抵抗は、分子生物学でも結構おもしろい分野です。みなさんも興味があれば、研究室の門をたたいてみてください。