ダムの底の方は目で当然見ることができません。でも水質面からある程度予測できます。
水質でも一番の指標は別稿でも示していますが、溶存酸素です。酸素は生物に必須なものですから、酸素が少ない(貧酸素といいます)では、魚介類は少ないか、いません。
この溶存酸素は、季節によって底の方は大きく違います。
端的に言うと、夏冬は貧酸素で、春秋は比較的酸素が多いです。これには水温が大きく絡んできます。夏冬は気温が水温より大きく高い、あるいは低いので、ダムの上の方が気温に近くなります。しかし、底の方は気温の影響を受けにくいです。このため、上と底で水温が大きく異なります。このため、水が上と底で混ざりくく、その結果、空気から酸素が供給される上の方の水が底にいかないため、底の方は酸素の供給がない、つまり貧酸素になるわけです。水温が上下で混ざらないため、水温の境目ができます。例えば夏は、表面や上の方の水は30℃くらいですが、ある深さになると急に温度が低くなり、10℃くらいになることがあります。この境目を水温躍層といいます。この結果、夏冬では底の方は貧酸素のため、当然魚などの生物はとても少ないか、いません。釣りをする人はこのことを知っておけば、魚は水温躍層の上にいることが分かります。つまり、底まで針をたれてもつれません。また、貧酸素になると、底の土壌中から、重金属が溶出しやすいので、下流で取水している浄水場や工場は要注意です。
なお、春秋は鉛直方向に回転が起きて、水が混ざるため、このような現象は少なくなります。